鵜沼宏樹さんのこと(1)

恩人であり、先生であり、友人である人がいる。
鵜沼宏樹さんという人だ。
私が中国武術に興味を持つようになったきっかけは、
ブルース・リーと「男組」なのだが、
その後、「空手バカ一代」の洗礼を受け、

空手バカ一代(1) (講談社漫画文庫)

空手バカ一代(1) (講談社漫画文庫)

やっぱり実戦的でなくっちゃと日本拳法や空手に流れた。
それから十数年が経ち、様々な経緯を経て、
ある人から鵜沼さんを紹介された。
当時私は拳法や空手にあきたりないものを感じており、
一方中国武術には確信が持てないでいた。
初対面の鵜沼さんは、知的で穏やかな印象だったが、
身体はずっしりとした安定感があり、
全身に無駄な力が入っておらず、
小柄ながらその中国武術的鍛練のほどがしのばれる体格だった。
鵜沼さんは、私に自分の胸や腹を力一杯叩かせたり蹴らせたりした。
力を込めて耐えている様子はまったくなく、平然としている。
私の突きや蹴りに威力がないと言ってしまえばそれまでだが、
それにしてもあまりに何気なさすぎる風情である。
当然鵜沼さんはいわゆる筋肉隆々の人ではない。
これには全く仰天してしまった。
その後、何回となくお会いする機会を得て、
いろいろ基礎的な技術を教わった。
今現在、私が学んでいるのは太極拳である。
これはやはり、太極拳の先生が、
その素晴らしい技術を身をもって示してくださったがゆえに
学んでいるのである。
ただ、鵜沼さんとの出会いがなければ、
太極拳の先生にお会いするまで、
中国武術に対する興味を持ち続けることはなかったかもしれない。