乞食組織(2)

かなり以前、中国の広州に留学したことがある。
このとき、市内を歩いていてやはり乞食を何人も見かけた。
手首がない人や皮膚のただれた人など、
様々な障害のもつ人が物乞いをやっていた。
中国人の先生に、そのことを告げたところ、
「中国では障害者に対して、残疾人協会という施設でケアしており、
そこで十分な手当や世話をを受けている。
君が見たように町で物乞いをしている者は、自ら進んでやっているのだ。」
とのことであった。
私も広州市内で確かに残疾人協会の建物の前を通り、
その存在自体は知っていた。
中に入ったわけではないので、
実際にどの程度のケアがなされているのかはわからない。
ただ、「丐幇」というものが今も現実に存在していて、
自ら進んで物乞いをやる人が本当に存在するのであれば、
それはそれなりの何らかのメリットがあるのか、
あるいはやらざるを得ない状況があるのかもしれない。
シャーロック・ホームズものの推理小説に、「口の曲がった男」というのがある。
妻子があって収入もある立派な男性が、妻子には会社勤めのように装いながらも、
実は本当の職業は乞食をしていた、という話である。
それによると、機知のある受け答えのできる乞食の収入は、
かなりの額になるということだった。
上海の「丐幇」のボスが豪邸に住んでいるとすれば、
それはやはり乞食が実入りのいい商売だということになるのだろう。