通臂拳(2)

通臂という言葉の意味について、
うろ覚えの伝説だが、かつて本で読んだことによると、
中国の奥地に幻の猿がいて、その猿が通臂だという。
通臂というのは、
左腕と右腕がつながっていることを言う。
その猿が右腕を伸ばすと、左腕が縮む。
逆に左腕を伸ばすと、右腕が縮むのだそうだ。
もちろんこれは、カッパのような想像上の動物である。
そして、
私の友人がやっていた通臂拳は、
白い猿の動きをヒントとして出来たものらしい。
この白猿というのは、
昔から中国では優れた猿のイメージを代表している。
友人が、自分の中国人の先生のビデオを見せてくれたことがある。
それは、ちょっと目を疑うような、
少々人間離れしていて、不気味な柔らかさを持った動きであった。
少し猫背で、肩関節が妙に柔らかく、腕がとても長く見える。
その動く様は、まさに猿のようであった。
さらに基本功を練るそのビデオには、
手が身体に当たる音、呼吸音、足を踏む音が合わさって、
何とも言えない音が出ていた。
なるほど、通臂とはよく言ったものだと思った。