わたしの宝石

友人の作家朱川湊人氏の「わたしの宝石」を読んだ。

わたしの宝石

わたしの宝石

朱川氏の新作を氏自身が送ってくれたのである。
早速読み始めて一気に読んでしまった。
全部で6つの短編から成る。
これまでと異なるのは、
朱川作品に当たり前にあった、
怪異や不思議的要素がごく少ないということだ。
「さみしいマフラー」は、
少し超常的要素があるが、
子供の頃の淡い恋愛を描いている。
舞台であるTという街は、
朱川氏が学生時代に暮らしていた街を思わせる。
「ポコタン・ザ・グレート」は、
容姿にコンプレックスのある少女の気持ちを、
コミカルでありながら深く描いている作品。
「マンマル荘の思い出」は、
アパートの住人達との交流を描いた、
ほのぼのとして切なく懐かしい作品。
「ボジョン、愛してる」は、
韓流アイドルオタクを描いた作品。
「想い出のセレナーデ」は、
子供時代、学生時代からの幼馴染との、
切ない心の動きを描いている作品で、
今回私が最も心を動かされた作品。
「彼女の宝石」は、
理想に生きる彼女との生き方を巡る作品。
いずれも心にジワジワと来る、
弱い人間の何とも言えない悲しさや愛しさを、
感じさせてくれる小説であった。
これもまた朱川氏の新境地である。