箱庭旅団

久しぶりに、
友人であり直木賞作家である朱川湊人氏の
新作を読ませて貰った。
「箱庭旅団」がそれである。

箱庭旅団

箱庭旅団

16の短編から成っている。
これまでの作品といささか異なるのは、
「いわゆる怖い話ではない」、
「昭和レトロ風ではない」、
「幻想的雰囲気が濃厚である」、
といったところだろうか。
かつての秀作「かたみ歌」のように、
16の短編がつながっていることが、
読み進むにつれてわかってくる。
かたみ歌 (新潮文庫)

かたみ歌 (新潮文庫)

読み終えて、特に以下の3編が印象に強く残る。
オツベルと象と宇宙人」は、
もちろん宮沢賢治の「オッペルと象」のパロディであるが、
そのユーモラスな感じが目に浮かぶようだ。
朱川くんは学生時代から、
「オッペルと象」の独特の語り口を気に入っていたようで、
よく我々友人同士の会話の中でも出てきていた。
「クリスマスの犬」は現代世相を反映しているが、
気持ちが救われる作品である。
そして「黄昏ラッパ」は、
涙が出そうになるような悲しく感動的で温かい作品である。
心にじわっと染みこんでくる新しい朱川作品を、
ぜひ多くの人に読んでいただきたいと思う。