なごり歌

朱川湊人「なごり歌」を読んだ。

なごり歌

なごり歌

友人である直木賞作家朱川湊人氏の最新刊である。
ある団地に住む人たちを描く7つの短編群であり、
それぞれの作品が互いに関わりあっている。
みな切なくて悲しくて、
そして懐かしくてほっとしてほろりとさせられる。
朱川作品の表看板のような作品である。
私が好きなのは「ゆうらり飛行機」で、
模型飛行機を飛ばす老人と、
子供を亡くした父親の心が、
救われていく過程がよい。
そして私が最も気に入ったのが、
「遠くの友だち」である。
いじめを受けていた小学生が、
団地に引っ越してくるが、
雷獣をきっかけに不思議なことが起こる。
こうしたある意味朱川氏の得意分野の中でも、
特に子供に関わる心の動きや描写にはいつも驚かされる。
「そうそう、確かにそうだった!」
とうなずく場面がいくつも出てくる。
これもぜひ多くの人に読んでほしい作品である。