冥の水底

朱川湊人氏の「冥の水底」を読んだ。

冥の水底

冥の水底

短編小説の多い朱川作品の中で、
これは長編の力作である。
現代の時代の主人公の動きと、
異形の主人公の手紙が交互に描かれて、
どんどん読み進んでしまう。
現代の主人公には、
その境遇と息子との関わり合いが胸を打つ。
一方、異形の主人公の純粋さと、
それがゆえの悲しさと憐れさが際立っている。
ほとんどすべての登場人物の悲しい生き方の中で、
わずかに救いがあるのも朱川作品の特徴かもしれない。
かなりの長編ではあるが、
一気に読んでしまう引き込む力を持った作品であった。