沈黙の王

宮城谷昌光「沈黙の王」を読んだ。

沈黙の王 (文春文庫)

沈黙の王 (文春文庫)

5つの短編小説が収められた本である。
「妖異記」と「豊饒の門」で、
笑わない王妃褒姒の故事を思い出した。
「地中の火」や「鳳凰の冠」も面白かった。
しかし、私にとって圧巻だったのは、
やはり表題作の「沈黙の王」であった。
何の予備知識もなく読み始めたが、
商の王子は言語障害があるために、
王を継ぐことができず旅に出る。
旅の様々な苦労の中で、
自分の意を読み取って言葉にしてくれる臣を見つけ、
帰国して王を継ぐことができるようになる。
そしてそれが字の発明につながっていく。
字を作るということが、
言語障害が背後にあったという事そのものと、
それに至る王子の苦難が重なり、
私にとって感動すら感じさせる作品であった。