境遇の違い

生徒さんが本を貸してくださった。
楊逸著「時が滲む朝」である。

時が滲む朝

時が滲む朝

芥川賞を受賞した中国人作家の受賞作である。
これほどの日本語を使えることにも驚かされるが、
読みやすくかつ日本人にはうかがい知れない中国人の心理が
よくわかる貴重な作品である。
数週間前、中国で生まれ育ったほぼ同世代の人から、
「僕は波乱万丈の人生を歩んできたんだよ。」
という話を聞いたばかりであった。
確かにこの世代の中国の人たちは波乱万丈であったろう。
さらにそれより以前の人たちは、
もっと大きな歴史の変化を経験してきただろう。
しかし、私が仕事で出会う留学生たちは、
日本の若者とそう変わらないように思える。
ちょっとした世代の違いで人生が大きく変わってしまうことがある。
もちろんそれを受け取る個人差はあるだろうが、
境遇の違いの人間形成に対する影響はやはり大変大きい。
そうすると、私には運命ということが厳然と存在するのだと思えるのだ。