動かぬが勝ち

佐江衆一「動かぬが勝ち」を読んだ。

動かぬが勝

動かぬが勝

七編の短編時代小説が収められている。
私が気に入ったのは、
表題作である「動かぬが勝ち」と、
最後の「永代橋春景色」である。
「動かぬが勝ち」は、
昔から剣術が好きだが、
生きるために出来なかった商家の主人が、
50を過ぎて道場に通い始め、
奉納試合に出場する話である。
他人事とは思えない設定に加え、
穏やか日常でありながら、
苦心しつつ向上する様を描いているのが好ましい。
永代橋春景色」は、
ヤクザの用心棒に身を落とした武士が、
1人の子供の登場によって、
やり直そうとする姿が良い。
他の作品も終わり方はともかく、
江戸情緒が随所に描かれているのがとてもいい。
江戸時代を味わえる作品集であった。