捨剣 夢想権之助

佐江衆一「捨剣 夢想権之助」を読んだ。

捨剣 夢想権之助 (新潮書下ろし時代小説)

捨剣 夢想権之助 (新潮書下ろし時代小説)

以前から興味を持っていた、
神道夢想流杖術創始者が主人公である。
この作家は浅山一伝流を学ぶ人らしい。
それだけに術技の描き方は詳しい。
この小説がどの程度まで史実に基づいているのか、
私にはわからない。
しかし、
この小説の権之助は面白い人物である。
天賦の才能があり、
兵法天下一を目指して諸国に修行に出る。
だが、よく負けている。
若い頃、船曳杢之助という武士に負け、
小野派一刀流小野次郎右衛門、
馬庭念流の樋口又七郎定次、
真田の三好清海入道に負ける。
そして有名な宮本武蔵には2回負けている。
それでも負けた相手から学び、
自分の技量を高めていく。
杖術として一流一派を立てる頃には、
様々なとらわれやこだわりがなくなり、
人格的にも大きく成長している。
特に晩年の宮本武蔵との交流は、
殺伐とした時代にあって心和む話である。
読み終わって感動できる、
とてもよい小説であった。