臨場

横山秀夫「臨場」を読んだ。

臨場 (光文社文庫)

臨場 (光文社文庫)

検視官を中心とした短編で描かれる警察物である。
8つある短編それぞれが、単一な場面設定でなく、
様々なシチュエーションで描かれるストーリーが面白い。
倉石は50代のベテラン検視官で、
余人を以て代えられぬ鋭い眼力で真実を見抜き、
難しい事件を解決に導く。
読んでいて、
まるでシャーロック・ホームズのような鋭さが小気味いい。
誰に対しても歯に衣着せぬ物言いをするので、
上層部に疎まれるが、信奉者も多い。
上下関係に関する鬱屈をはらしてくれるようで、
これもまた日本人好みではないだろうか。
そして実は人情にも厚いという面もあり、
ある意味理想的なヒーロー像である。
あまりに理想的だと陳腐になりそうだが、
そうならないところに作家のうまさがあるのだろう。