自分探し(4)

大学3年も後半になると、就職を意識する。
当時キャンパスを歩いていると、
就職雑誌だか何だかの人が、
「ちょっと質問させてもらっていいですか?」と言ってきた。
承諾すると、「何学部の方ですか?」と聞くので、
文学部であることを言うと、
「ああ、じゃあ結構です。」と言って、向こうに行ってしまった。
失礼なやつだと思うと同時に、
世間では文学部を、就職を念頭に置いていない、
浮世離れした学部のようにとらえているのだな、と思った。
実際、私は就職対策に身を入れる気が起きなかった。
大学の学科にいた周囲の人たちは、
どういうわけか私が大学院に進むものだと思っていたようだが、
何となく私にはそれも念頭にはなかった。
大学2年の時の留学の楽しさが思い出され、
少し長期の留学をしたいと思い始めていた。
しかし、経済的なこともあり、親には反対された。
そこで国費の留学生を目指したのだが、
面接で目的意識の希薄なところをつかれ、
留学の夢はあえなく潰えてしまった。