自分探し(5)

大学卒業を1年後に控えて、国費留学の夢は潰えた。
私費で留学できる余裕もなかったので、
親の強い勧めもあり、就職することにした。
時まさにバブル期であったし、
ツテを頼っての紹介による就職試験でもあり、
大手電機メーカーに問題なく就職が決まった。
贅沢な話だが、
それでも熱望して就職したわけでもなかったので、
どこか鬱屈したものがあり、
サラリーマンになることに憂鬱さを覚えていた。
ところが、入社後すぐの研修に驚いた。
わずか2週間ほどの研修で、
会社の歴史や理念を座学で学ぶのだが、
クラスに分かれ、
中学時代のように授業形式の研修を受けるうち、
やる気のある同期との仲間意識も生まれ、
自分の精神状態が変わっていくのがわかった。
2週間の研修終了後は、憂鬱さもどこかに失せて、
すっかりやる気に満ちた前向き人間になっていたのだ。
研修恐るべし。
私が単純人間であることを割り引いても、
こうした研修はちょっとした心理セラピーの要素があると思う。
優れた企業の研修のやり方を応用できれば、
昨今のニート対策に一役買うことが出来るかも知れない。