達人に会う(7)

当時の佐川道場には、
当時の私と同年代の人も数人おられた。
学生や柔道整復士を目指して勉強しておられる方だった。
ただ、全般的には年齢が上の人が多く、
教師など教育関係の方が多かったように思う。
当時の月謝は、確か月3000円だったと思う。
「透明な力」や「合気習得への道」を書かれた、
木村達雄先生にもお会いした。

透明な力

透明な力

合気修得への道―佐川幸義先生に就いた二十年

合気修得への道―佐川幸義先生に就いた二十年

最初の見学の時は、昼の練習時間に行ったのだが、
そこに木村先生もおられた。
木村先生は、私のような見学者にも先生の技を見せてあげたい、
といった気持ちがおありのようだった。
さかんに佐川先生に質問され、
何かヒントになるような言葉や技を絶えず引き出したい、
と思っておられることが傍目にもよくわかった。
入門を許されてから、道場でお目にかかると、
「お、来たな。」と言っていろいろ親切に説明してくださった。
合気道をやっていたが、佐川先生のすごさを体験して、
この道に入られたことなどを話され、
合気上げなど初歩の技を教えてくださった。
木村先生の太い手首を掴むと、体重をかけて力を込めて掴んでも、
何か妙に力が入らないような感じがして、
すっと上げられてしまった。
逆に木村先生に押さえられると、
私が渾身の力で持ち上げようとしても全然あがらなかった。
木村先生の体格はがっしりしていて分厚い感じで、
普通だとまったく倒せる感じがしない。
それでも佐川先生にかかると、
濡れぞうきんのように畳に叩きつけられてしまう。
佐川先生は大きく動かれるわけでもないのに、
体格のいい人達がものすごい音でたたきつけられるので、
一般の物理現象を超えている光景を目にするわけで、
ただただ驚くしかない。
仮にやらせだとしても、派手に吹っ飛ぶだけならともかく、
自ら猛烈な勢いで畳に叩きつけられることなど不可能だ。
後に、佐川先生の実力を疑うような発言を耳にしたり、
本か雑誌で見たことがあったが、
少なくとも、その光景を目の当たりにした私としては、
佐川先生が正真正銘の達人であることを信じて疑わない。