自発的ルール

ふと思い出した。
かつて子供が小さい頃、
子供のことで病院の朝の順番待ちをすることが、
たびたびあった。
朝早く私が出勤前に病院に行き、
順番をとっておいて、
後から子供を連れてやってくる家内と交代するのだ。
そして私はそのまま出勤する。
順番待ちは病院の受付開始前に行く。
行っていたのは大きな総合病院であった。
玄関に外門と内門があり、
外門は開いているが、内門は受付開始まで開かない。
受け付け開始まで、
その外門と内門の間のスペースで開門を待つのだ。
かなり早く行ってもだいたい誰か開門を待っている人がいた。
その順番待ちにはルールがあった。
外門が開いて中に入ると、入った人は例えば、
「小児科の最後の人は誰ですか?」
と大きな声で尋ねる。
この人だ、とわかるとその後ろに並ぶ。
そのことで並んでいる人たちの間で、
順番の了解とその共有が出来る。
みんな順番を分かっているので、
たまに順番を抜かす人がいると、
誰かが「この人が先」と言ってくれるのだ。
これは病院側が決めたのではない。
待っている人たちの中で自然に生まれた、
余計な争いを生まない自発的ルールなのであった。