偏屈な名人

今日の授業では、整体士の生徒さんが来られていた。
その生徒さんが人体を扱う仕事に就くきっかけとなった
ある鍼灸師の先生の話を聞いた。
その先生は、当時すでに70代くらいの高齢だったらしい。
知り合いの紹介で行ったその鍼灸院は、
看板も見えにくく、普通の民家と何ら変わりないつくりで、
性格が偏屈なためか患者は少なかったようだ。
しかし腕は確かで、
少ない患者は日本各地から来ていたようだ。
生徒さんのお母さんがひどい肩こりと頭痛の時、
生徒さんが肩をもんであげてもカチカチだったそうだ。
そこでその鍼灸院に行って治療を受けて帰り、
またその生徒さんが肩を触ると、
嘘のように柔らかくなっていたそうだ。
生徒さん自身が体調が悪くて通院した時期も、
偏屈ながらも陰陽五行の話や
どの時期に何を食べるとよいか、
など様々なことを教えてくれたそうだ。
先生ご自身はもう亡くなられたようだが、
鍼灸師になった娘さんにもその優れた技術は教えず、
それだけの腕と技術や知識も途絶えてしまったようだ。
残念至極ではあるが、
なるほど確かに偏屈の名にふさわしい気もする。