愛媛の旅(2)

特急「しおかぜ」に乗って2時間近く、
伊予西条」という駅に着く。
そこで、普通に乗り換える。
この普通電車が何と単線運行であった。
レールが1本だけなのである。
車両も1両だけで、乗務員も運転手1人である。
まるでバスのように、乗車時に整理券をとり、
降りる駅に来ると、運転手に整理券とお金を渡すのである。
数駅乗って、「伊予氷見」という駅に降りた。
ここが目的地である家内の母の実家のあるところだ。
無人駅を出てから歩いて実家の前まで来て、
その後、山の斜面に大きく広がる墓地へ行く。
日差しが強く暑いが、風も強いので快適である。
軽い山登りをして、お墓に到着。
田舎だけに、墓石に同じ苗字が多いのに気付く。
お参りを済ませると、また無人駅へ戻る。
途中出会う人たちが「こんにちは。」と挨拶してくる。
慌てて挨拶を返すが、驚くと共に、
見知らぬ人にも挨拶をする習慣が残っているのだ、
と感慨深くなる。
無人駅のベンチに座りながら、
数十分後に来る電車を待つ。
目の前に広がる田んぼや古い民家をぼんやり見ている。
あまり人が動く気配がしない。
汗を洗い流してくれるかのように、
少し強くて気持ちの良い風が吹き付けてくる。
ほとんど物音のしない中をぼんやりしていると、
普段しょっちゅう喋る子供達まで静かにしている。
自然に精神が静まっていき、
何故かインドの田舎に行ったときの記憶が蘇り、
瞑想状態に入ったかのような気がした。
電車が来るまでの短い時間であったが、
少々大げさだが、至福の時であった。