ネパールで(2)

先ほどまで周囲が笑っていたため、
腹や背中をその女の人に叩かれるに任せていたが、
少々気味が悪くなってきたため、
またその女性が近寄ってきたので、
あわてて小走りに走って逃げようとした。
すると女性も追いかけてくる。
その光景を見て周囲はますます笑う。
あちこち逃げるが、追いかけてきて、
何度か腹や背中を叩かれた。
痛くはないのだが、
手に塗りつけている赤い粉が、
私の着ているシャツに付いた。
何度目かに、女性が近づいてきたとき、
突然私がシャツのポケットに入れていた、
地図とペンを取り上げた。
すると、今まで笑っていた周囲のチベット人達が、
申し合わせたかのように、ザッと集まってきて、
その女性に「返せ!」と言い、
地図とペンは戻ってきた。
そしてその中の1人が、
「あいつはちょっとおかしいんだ。
おまえ早く逃げろ。」
と言ってきた。
私は、
「なんだそれは?
それなら笑ってないで早く言ってくれればいいのに。」
と思いながらも、急いでその場を立ち去った。
思えば、変な経験だったが、
ともかくも旅の思い出にはなった。