ネパールで(1)

20数年前、大学の卒業旅行で、
約1ヶ月、友人とインド・ネパール旅行に出かけた。
ネパールでのこと。
ネパールには多くのチベット人が亡命して暮らしている。
当然、チベット人が信じるチベット仏教のお寺が多くある。
そのうちのあるお寺に観光で入った。
寺の向かいの店で、有名なチベットのバター茶を飲み、
寺の境内に入った。
円形の境内には、多くの人がマニ車を回しつつ、
お参りをしていた。
お経のような歌というか音楽が流れていた。
ふと気付くと、その音楽に合わせて、
手足と顔に真っ赤な粉を塗りつけた女の人が、
まるで空中遊泳のような動きで踊りつつ歩いていた。
宗教施設なので、そういう人もいるのだろうと見ていた。
と、突然、その女が近づいてきて、
空手で言う掌底突きで、私のみぞおちをドスッと突いてきた。
武道をやっていた私が、何となく避けられず当たってしまった。
その途端、周囲にいたチベット人達がどっと笑った。
その雰囲気から、剣呑なものではないのだろうと、
私も合わせてヘラヘラ笑っていた。
で、その場を立ち去ろうとすると、
今度は後ろから、ちょうどみぞおちのウラを、
またもやドスッと突かれた。
すると、チベット人達はまたどっと笑うのだ。
「何なんだ、これは?」と少々気味悪くなった。