空飛ぶ馬

北村薫「空飛ぶ馬」を読んだ。

空飛ぶ馬 (創元推理文庫―現代日本推理小説叢書)

空飛ぶ馬 (創元推理文庫―現代日本推理小説叢書)

5つの短編から成る推理物である。
大学の文学部に学ぶ女子大生が主人公。
日常生活の中で起こる様々な出来事を、
教授に紹介された落語家に話し、
話を聞いただけのその落語家が解決してしまう。
「隅の老人」や「黒後家蜘蛛の会」のヘンリーのように、
隅の老人【完全版】

隅の老人【完全版】

話を聞いただけで解決に導く、
いわゆる「安楽椅子探偵」系と言えるだろう。
小説一般に言えることだが、
本筋と関係のない描写などで、
面倒だなと思えるものは読み飛ばしがちだが、
この作品は妙に日常生活の描写が心地よくて、
ゆっくり読む気になる。
また今どきの女子大生で、
ここまで文学や芸術作品に造詣が深い人が、
果たして本当にいるのだろうか、
と思えるほどにこの主人公は教養がある。
色んな意味で他のミステリものとは一線を画す、
このシリーズを続けて読んでいこうと思う。