いっぽん桜

山本一力「いっぽん桜」を読んだ。

いっぽん桜 (新潮文庫)

いっぽん桜 (新潮文庫)

4つの短編からなる小説である。
人情時代小説の山本一力作品で、
商人や職人の心意気を描いたものが多い中、
これまで読んだものと少し異なるのは、
リアルで切ない短編が収められている事だ。
表題作の「いっぽん桜」は、
商家を大きくしてきた自負のある番頭が、
主人から自分の代替わりと共に早期退職を迫られ、
それに対応する心の変化を描いたものである。
現代人同様の心の葛藤がリアルに迫ってくる。
他の短編もどこか悲しく切ない作品ばかりで、
何か身につまされる感じのする小説であった。