入院生活(10)

今回の入院生活体験で、
いろいろ考えることもあったが、
最も印象深かったのは、
実は同室の人たちだった。
私のいた病室は6人部屋で、
1つベッドが空いていて、
実質、私を含めて5人がいた。
カーテンで仕切られていたので、
あまり詳しくはわからないが、
みんな私より年上で、
1人が60代なのを除けば、
他は70代後半のおじいさんばかりだった。
私の隣の人は、
ほぼ寝たきりでトイレもままならず、
耳も遠いうえに少々認知症の感じがあった。
その上、先日の台風で、
住居が住めないレベルまで被害を受けたらしい。
残り2人もまだ軽いが、
どうもガンを患っているようであった。
60代の人は、
看護士相手に軽口をきくような明るい人であった。
しかし、
私が退院する前日の夜、
手術後の経過が思わしくなかったのか、
「全身が痛い!」、「息ができない!」
と言って突然苦しみだした。
看護士や医師がやってきて、
いろいろ処置をしたが芳しくなく、
ベッドごと処置室に連れて行かれた。
その苦しむ声を聞く私たちからすると、
「ひょっとしたらこの人はこのまま死ぬのではないか?」
と思わせるほどの苦しみようであった。
私は同室のおじいさんたちから、
死が案外身近に存在すること、
そして健康で自由に動けることが、
実はどれほど幸せなことなのか、
ということを切実に学ばせてもらったのであった。