満月ケチャップライス

友人である直木賞作家、
朱川湊人氏の新作「満月ケチャップライス」を読んだ。

満月ケチャップライス

満月ケチャップライス

主人公というのか、この作品の中心人物である、
モヒカン頭の「チキさん」はとてもいい!
先日ブログにも書いた座敷わらしは、
キャラクターの可愛さがあっていいのだが、
こちらの「チキさん」は外見の可愛さはないが、
それゆえそのキャラクターの良さが際立っている。
ろくでもない父親がいなくなった家庭で、
しっかりしているようで脆い母親と、
事故にあった妹と、
その妹を必死に守ろうとする兄の生活に、
この「チキさん」が突然加わったことで、
大きな変化が生まれていく感動的な物語である。
この作品で特に感じられるのは、
家庭の温かさの偉大さと、
人間の弱さに対する優しい視線である。
これはやはり自身が波瀾万丈の人生の中で、
苦難を乗り越えてきた、
そして弱くて情けないが愛すべき人間を見続けてきた、
作者朱川氏自身の人生観や人柄が大きく反映されている。
彼の人間性を幾ばくか知る者として、
私はそう思うのである。