西村久蔵という人

地元の図書館で借りて、
三浦綾子の「愛の鬼才 西村久蔵の歩んだ道」を読んだ。

愛の鬼才―西村久蔵の歩んだ道 (新潮文庫)

愛の鬼才―西村久蔵の歩んだ道 (新潮文庫)

これは先日読んだ「塩狩峠」より強烈であった。
塩狩峠」は実在の人物モデルがいるとはいえ、
やはり創作部分も多々あっただろうと思う。
しかし、「愛の鬼才」は残された事実に基づいて書かれている。
この人は明治から昭和にかけて生きた北海道の実業家で、
「洋菓子のニシムラ」の創業者であるが、
キリスト教の熱心な信者であり、実践者であった。
盗んだ物が西村の物だとわかった泥棒が、
その盗んだ物を返してきた話。
禁酒運動を行っていた街頭で、
からんできた酔っぱらいを改心させた話。
教師時代に生徒に真心で向き合った話。
事業経営の傍ら、寸暇を惜しんで、
恵まれない人や病気の人を見舞った話。
このほかにも感動的な話が多くあり、圧倒される。
私は武術が好きで、いわゆる「強い」先生たちや、
その先生たちの逸話もたくさん知っている。
しかし、
その先生たちが本当の意味で精神的な「強さ」があるか、
と言えば、必ずしもそうでもないように思える。
ところが、この西村久蔵という人は、
信念、信仰に基づいた誠の人であり、
本当の意味で精神的に強い人であると私は思う。
現在この本は絶版であるようだ。
私はどうしても手元に置きたくなり、
ネットで古本を注文した。
この本は、
私にとってここ最近で最もインパクトのあった本である。