強力伝

昨日、新田次郎の「強力伝」を読んだ。

強力伝・孤島 (新潮文庫)

強力伝・孤島 (新潮文庫)

何十年も前のことだが、
何とか文庫の100冊というような冊子を見て、
これを読みたい、あれも読もう、と考えていたことがある。
その時に気になっていたのに、
ずっと読んでいなかった作品が「強力伝」なのである。
強力とは高い山に荷物を運び上げる人のことで、
作品は、重さ180キロの風景指示盤の石を
白馬岳山頂に運ぶ実在した強力の人を描いている。
本に「二十世紀最後の職人の魂」とあって、
確かにそうした部分を書いているが、
ちょっとした人情の機微が描かれているのも面白いし、
何よりも山の様子や天候を描く言葉の美しさに驚く。
しばらくストーリーを追うようなものばかり読んでいたので、
こうしたいわゆる文学作品を読むのが久しぶりで、
とても新鮮な感じがした。