ノスタルジー

少し前に映画「秋刀魚の味」を見た。

秋刀魚の味(TV版) [DVD]

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有名な小津安二郎という監督が撮った作品だが、
私はこの小津映画を一回も見たことがなかった。
しかしある香港の映画俳優が、
「小津作品が大好きだ。」
とインタビューで話しているのを見て、
どんなものなのかずっと興味を持っていたのだ。
見終わって、
確かに普通の映画とは違うとは思ったものの、
私にとっては、正直どれほど凄いのかはよくわからなかった。
話の内容もテンポもゆっくりしていてよかったし、
笠智衆の穏やかで柔らかな雰囲気もとてもよかった。
ただ、私にとって最も印象的だったのは映画そのものではなく、
映画の中の当時の日本人の価値観と、
時折出てくる当時の日本の町並みやマンションや家の様子であった。
昭和37年という、
私が生まれた年に作られたこの作品のそうした風景や雰囲気が、
何とも懐かしくノスタルジーを感じさせるものだったのだ。
見ていると、
「ああ、そうそう、こんなのがあった。」
というようなシーンが何度も出てきた。
それは何か胸の奥の普段出てこない感情を
引っ張り出されたような感じであった。
小津映画ファンには申し訳ないが、
私が最も感じたのはこのノスタルジーであった。