オルゴォル

ここのところ図書館で借りた本のことを書いている。
そうなると、
友人の朱川湊人氏の作品を紹介しないのはおかしい。
ということで、「オルゴォル」である。

オルゴォル

オルゴォル

もちろん、これは借りたのではなく、買ったのである。
簡単に言えば、
親が離婚した小学生の男の子が約束を果たすために、
九州に旅行する過程で精神的に大きく成長する物語である。
これは推理ものやホラーではなくて、
人の心を扱う現代文学作品と言えるだろう。
朱川氏は子供のことを書くのが上手い。
特にこの作品は、
現代の子供や大人の心の機微が細かく描かれている。
いわゆるすれて屈折した現代っ子が、
旅行を通して人の気持ちに共感できるようになってくる間の
心の変化が細かく描かれていて見事である。
朱川氏の子供の頃からの記憶の確かさ、
育った境遇、人を思いやる優しい性格、言葉の使い方の上手さ、
こうした面が十分活かされている作品だと思う。