武士猿

「義珍の拳」に続いて読んだのが、
「武士猿」である。

武士猿

武士猿

「義珍の拳」の船越義珍は空手を紹介普及させた人であり、
君子然とした教育者であった。
これに対し、ほぼ同時期に空手の強さを知らしめたのが、
実在の実戦名人であった本部朝基である。
この本部朝基を主人公にした小説が、
「武士猿」なのである。
有名なボクシング選手を打ち倒した話も出てくるが、
私が好きなのはやはり沖縄の修業時代の話である。
伝統的な型を徹底的に練り込むのだが、
それを「掛け試し」というケンカに近い実戦練習により、
その強さを確認、強化していったのだ。
私がかつて学習塾の講師をしていた時、
同僚のアルバイト講師で、
この本部流の空手をやっていた人がいた。
残念ながら技を見る機会はなかったが、
本部朝基は大阪で道場を開いていたことがあって、
息子さんもおられてその技が受け継がれているのだ。
私自身は伝統的な空手を学んだことはないが、
著者も自ら空手を練る人だけに、
描写がリアルで納得でき、面白い小説であった。