ウルトラマンメビウス

昨日、朱川湊人氏の作品、
ウルトラマンメビウス アンデレスホリゾント」
を読み終えた。

ウルトラマンメビウス アンデレスホリゾント

ウルトラマンメビウス アンデレスホリゾント

一言で言えば、大変に面白い!
この作品は、また今までの朱川作品と異なる。
彼の作品の文章は、
主人公や準主役の人の独白調がほとんどである。
しかしこの作品では、筆者の説明文体である。
かつてテレビで放映されたウルトラマンメビウスで、
彼が脚本を書いた3作品をもとにして、
小説の形になっている。
子ども向けの底の浅い作品だと思ってはいけない。
決して侮れない深く感動的な小説なのである。
大学時代、朱川くんが住んでいたアパートに、
何度も遊びに行かせてもらった。
当時の彼の部屋には、「宇宙船」という特撮の専門雑誌や、
彼が作ったとてもリアルな仮面ライダーのマスクなどが、
生活用品や本と並んで置いてあったものだった。
私も同世代であるから、
初代ウルトラマンや初代仮面ライダーには、
夢中になったものだし、今でも懐かしい。
しかし彼の知識や記憶の確かさは並はずれていた。
今思えば、彼はいわゆる特撮オタクの走りだったのであろう。
この作品は、彼のそうしたウルトラマンシリーズへの
深い知識と愛情と思い入れが結実したものであり、
泣けるホラーの旗手である直木賞作家の技量が
さらにそれを深みのある小説に仕上げたのである。
いずれにせよ、これは朱川湊人にしか書けない
素晴らしい小説であり、
ホラーの作品群とは異なるが、
まぎれもない彼の代表作と言っていい小説なのである。