猫のスタンバイ

我が家では就寝時間になると、猫を洗面所に閉じこめる。
洗面所には、電気温熱シートがあり、
夜中に寒くないようにしている。
また、猫の餌やトイレも洗面所に置いているので、
猫の生活空間としては問題ないのである。
夜寝るときに猫を閉じこめておかないと、
寝ている家族の顔をあのザラザラした舌で舐めたりするし、
妙にハイになって枕元を猛烈な勢いで走り抜けたり、
ハンガーに掛けてつるしてある上着
際限なく飛びつくのを繰り返したりするからである。
したがっていつも就寝時間に猫を捕まえて、
洗面所に閉じこめる。
自由を愛する猫は、当然のことながら嫌がって逃げ回るが、
最後には捕まって閉じこめられてしまう。
これが毎晩の我が家の恒例となっていた。
ところが昨晩、変化が起きた。
そろそろ寝るかと言うときに、
それまで他の部屋にいた猫がそそくさと立ち上がり、
自ら進んで洗面所の温熱シートに座ったのである。
まるで自分のルーティンワークを心得ていて、
それを淡々とこなしているというようなすました表情であった。
その観念した悟ったような表情は、妙に笑えた。