自分探し(8)

2人しかいなかった宣伝係は、
まだ30代に入ったかどうかという若い主任が
係長であった。
この人は関西出身で、
周囲の人たちが一目置くほどの切れ者であり、
英語とドイツ語が堪能であった。
ただ頭が良いだけではなくて、
仕事上の勉強や努力も絶えずされているようだったし、
対人関係においても万事粗略なしという感じがあって、
誰もがその出世を疑わない存在であった。
私はご自宅に呼んでいただいてご馳走になったり、
いろいろお世話になったが、
優れた存在はやはり目立つものらしい。
いくらもしないうちに、その主任は本部へ栄転となった。
数年後私が会社を辞める事になったときも、
わざわざ飲みに誘ってくださり話をしたが、
その時初めてその主任が、
有名な宗教家の孫であることを知った。
主任の仕事や生きる姿勢みたいなものには、
やはりそういうバックボーンがあればこそなのだろう、
と納得したものだった。