身近な物

昨日の仕事帰り、乗っていた電車が少し遅れた。
何でも少し先の駅で人身事故があったらしかった。
十年近く前のある日のことを思いだした。
その日、乗っていた電車がホームで止まったまま、
しばらく停止を続けていた。
なかなか動かないなと思っていると、
車内がざわつきだした。
ホームで駅員が行ったり来たりしているのを見て、
何か起こったのだとわかった。
少し覗いてみると、
ホームから線路に落ちた人を、
向かいの線路を通過しようとした電車が轢いたようだった。
当然その人は亡くなっていた。
飛び込んだのか落ちたのかはわからない。
遺体を見たわけではないが、
何とその人は先ほどまで私と同じ車両に乗っていた人だった。
「先ほどまで生きていた人が…」という思いと、
ホームに散らばっていたその人の持ち物が悲しかった。
私の個人的な感傷かも知れないが、
その人が生きていた日常を示す身近な物は、
何か哀れさと悲しさを突きつけてくる気がする。
亡くなった父の遺品を整理するときもそう感じた。