飛行機の中(2)

そのマレーシア華僑の宣教師は、
もともと中華系の伝統宗教を信じていたが、
キリスト教に触れて改宗したのだと言っていた。
そして、「君と私が出会ったのは神のお導きだ。」
と言いだし、いろいろキリスト教のことを語り出した。
私は幼稚園はカトリックで、
高校はイギリス国教会の系統だった。
キリスト教のことはある程度は知っている。
その宣教師の話は、特に目新しいものでもなかった。
またその話しぶりに少々独善的なものを感じた。
彼はさらに、
「君は中国語がわかるのだから、
一緒に聖書を読んでみよう。」
と言い出した。
断るのも言い出しづらく、
勧められるままに、飛行機の中で、
彼と声を合わせて中国語で聖書を数節読んだ。
すると彼は喜び、
さらにいろいろキリスト教の話を始めた。
私は少しうるさくなり、小説の続きも読みたかったので、
「どんな宗教にもそれぞれいいところがあります。」
と言うと、気を悪くしたのか、
彼はそれ以上言わなくなり、私はまた小説を読むことが出来た。
飛行機を降りるときは、お互い挨拶をして別れた。
機内で聖書を読んでいるときは、
家内は笑いをこらえるのに必死だったそうだ。