書道(2)

かつて新体道をやっていたときに、合宿に参加した。
そこで同室になった人が、書道の先生だった。
その先生の書道が変わっていて、
筆禅といって坐禅を組んでから書を書くのだと言う。
「書と禅」という本があって、
この本の著者で禅僧の大森曹玄という人が、
当時の代表的な指導者であったらしい。
この流派は、流派名を「入木道」という。
もとは空海を開祖とするが、
幕末の山岡鉄舟もこれを学んだそうだ。
中国語の成語で「入木三分」というのがある。
これは筆勢雄勁であることを表し、
かの王羲之が板に字を書いたところ、
板に墨が染みこんだ故事に由来すると言う。
おそらく流派名も、これに基づいて名付けられたのだろう。
後に、その知り合いになった書道の先生から、
山岡鉄舟の遺墨展の案内をいただき、
見に行ったことがある。
「書と禅」を読んで予備知識があったこともあるが、
それは何とも素晴らしい勢いに満ちた書であった。
山岡鉄舟という人は、政治的にも活躍したし、
剣でも無刀流を打ち立てたし、禅でも悟りを開いたという、
ちょっと比類のない傑物であるが、
本を読んで、すごい人だなあと思うのはもちろんだが、
実際に本人が書いた書を見ると、
やはりその人間的迫力が身近に迫ってくる気がしたものだ。