達人に会う(11)

心身開発体操であった新体道であるが、
もとは松涛会空手を中心とする武術である。
青木先生については、
ヨーロッパ空手チャンピオンが立ち合って、
青木先生には手も足も出なかったとか、
フルコンタクト空手の道場破りを一蹴した、
などの話を聞いていた。
噂に高い遠当ても目の当たりにしたが、
松涛会系の組手は、
遠間からの中段突きを主体とする。
したがって、
何でもありでガンガン連続攻撃すればどうなるのか、
という疑問はあった。
我々の稽古をつけてくださっていたのは、
時折、ウェンディ先生など女性の先生も来られたが、
主に、当時最高師範であった岡田先生であった。
ある時、練習生の1人が中段突きで岡田先生を攻撃していた時、
突然、ストレートさらに上から突きおろす突きや下突きなど、
フルコンタクト式の攻撃を始めた。
周囲の雰囲気は一変し、周りの者は驚いたが、
岡田先生は相手の攻撃に合わせて後ろに下がりつつ、
突きに下段払いを合わせた。
その下段払いは、タイミングや脱力具合が絶妙で、
突きを出す側がダメージを受けていき、
ついには腕が上がらなくなって相手は、
「まいりました。」と攻撃をやめた。
岡田先生は、笑いながら対応しておられた。
相手のレベルやシチュエーションにもよるが、
新体道は優れた武術でもあることを認識させられた。