達人に会う(10)

思えば、大学時代に私はすでに新体道を知っていた。
大学には新体道棒術部というのがあり、
キャンパスで練習しているのを何回か見ていた。
白い道着で大声で走り回る姿を見て、
異様に感じて近寄れなかったが、
当時私が少しだけ所属した中国武術研究会は、
もともと新体道棒術部と関係があったとも聞いた。
さて、新体道といえば、創始者の青木先生だが、
やはりお会いできたときには、
そのカリスマ性を感じずにはおれなかった。
見ると、とても大きい人に見えるのだが、
動かれる時の姿は、あまり重く感じさせず、
むしろ重みを感じない風で、
ふわっと、そしてサッと軽やかに滑るように進まれる感じだ。
ある時、本部道場で稽古中、
偶然、我々の稽古している横で青木先生が、
空手などの動きをされているのを見られる幸運にでくわした。
それはそれは、素晴らしい動きだった。
一言で言えば、身体の動きに一切よどみがないのである。
それでいて、鋭く威力があるように感じられる。
例えば、横蹴りをすると、
脇腹から突然、槍がビュッと突き出てくる感じだ。
突きなども、腕ではなく身体そのものが、
全体で柔らかく鋭い突きを行っているのだ。
杖なども、柔らかいのに速くてブンッと振る音が聞こえる。
我々は自分の稽古も忘れて見とれてしまっていた。
その動きは、他に類を見ないものであり、
美しいともいえる動きであった。