達人に会う(2)

高校時代に芦原道場に通えなかった私は、
高校の日本拳法部に入り、約2年間練習した。
家でも筋力トレーニングやサンドバッグを叩いたりしていた。
それなりに自信があったにもかかわらず、
身長180以上の後輩を楽に対処できるわけではなかった。
そこで、体格や年齢に関係ない武術に目を向けるようになり、
古流武術や中国武術に関心を持つようになった。
大学に入ると、中国武術研究会があり、
弾腿や少林拳を習えてうれしかったのだが、
組手を行うと日本拳法や空手の方が優れている気がした。
私が中国武術に求める、
体格や年齢に関係ない要素が存在するようには思えなかったのだ。
ある時、「武道館の練習に行こう。」と先輩に誘われた。
行ってみると、様々な中国武術の人が一緒に練習していた。
その後組手になり、螳螂拳の人とは楽に戦えたが、
南拳の人には目を叩かれたりした。
最後に、太気拳の人と組手をした。
身長は私とほぼ同じで痩せていたその人は、
並はずれた動きをした。
間合いに入ったり外したりするのが大変早く、
何度も顔をはたかれた。
顔面へのパンチやキックは反則、というルールだったので、
私がその人の顔面へのハイキックを寸止めに決めたのを除くと、
私にいいところは1つもなかった。
結果は、私の大差の判定負けといったところで、
悔しかったのだが、相手のレベルの高さはよくわかった。
何でも当時の大道塾の大会でも上位入賞したとのことだった。
その人は若いので、達人とまではいかないが、
中国武術もすごいものがある、太気拳恐るべし、と感じた。
結局、私は大学の中国武術研究会はやめてしまった。
太気拳に行くことも考えたが、
行ったとしても、その人の後塵を拝することになると思い、
自分なりに納得するものを探すことにした。