竹内阿明さんのこと(1)

親しくさせていただいている友人に竹内阿明さんがいる。
彼は真言宗のお坊さんである。
以前同じ教室で太極拳を学んでいるときに知り合った。
その後、中国で行われた太極拳の大会に行った際にいろいろ話をして、
趣味嗜好がかなり近かったせいで意気投合した。
彼は一言で言えば、修行に対して真剣で真面目なお坊さんである。
かつて観光で日本有数の大きなお寺に行ったことがある。
大きなお寺だけに様々な雑務があるのであろう。
働いているお坊さん達は、畳の部屋に机や電話があり、
忙しそうに働いていた。
僧衣や畳がなければ、どこかのオフィスと言った風情であった。
僧侶も世にある多くの職業の一つであるから、
サラリーマンのように働くのは当然なのであろう。
竹内さんもお寺に雇われた僧侶であるし、
毎日出勤して、おつとめをしている。
しかし彼は本格的なヨーガや瞑想を行い、
常に自分を高める修行をしている。
彼の家に何度かお邪魔させてもらったことがある。
驚いたのは、窓があるところを除いて、
壁はすべて天井まである本の山で埋まっていたことだ。
そこだけではなく、倉庫や実家にも多くの蔵書があるという。
もっと驚くのは、その食生活である。
彼の主食は発芽玄米で、あと少し野菜を食べる。
台所の流しには、ビーカーのようなものがあり、
中に水と玄米が入っていた。
中の玄米が発芽するとそれを食べるという。
そんな厳格な菜食をしている竹内さんであるが、
素晴らしいのは、例えばつきあいなどで外食をするような場合、
少し酒や肉も食べるぐらいの柔軟さも持ち合わせている点である。
どこへ行こうが完全菜食に徹するというのも素晴らしいと思うが、
私自身は、現代の日本で社会と接点をもちながら修行するのであれば、
こうした柔軟さがある人の方が、本物だと思っている。