文字盤

入院中の父親がようやくICUから出て、一般の病室に移った。
手術した腸閉塞の方は問題ないのだが、もともとの肺炎の方がひどく、
喉の下の方に穴を開けて、呼吸補助及び痰の処理をしているようだ。
したがって話せない。
紙の上にペンで字を書くのも大変なので、
意思の疎通は手のひらに指で字を書くという形で行っていた。
ただ、これだと読み間違いも多く、わかりにくくて不便だ。
そこで、文字盤を作ることにした。
画用紙に、まるでコックリさんのように、
「あいうえお」と50音を書き、それを指さすようにする。
これだと間違いもなく、長いセンテンスも伝えられる。
字は子供に書かせたので、
父は子供が作ったものと思い、使いやすいので感激し、
さっそく文字盤に、
「こづかいをやってくれ」と指さした。
おそらくこうした文字盤のような意思伝達道具は、
作られていて、販売もされているのだろうと思う。
しかし、手作りはやはり手作りならでは味がある。